| リチャード・ロドニー・ベネット |
| Richard Rodney Bennett 1936〜 |
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★ 20世紀後半のイギリスで最も才能のある作曲家の一人。英国王立音楽院で学んだのちパリでブーレーズに師事、現代音楽に傾倒した。ただ作品は『遥か群衆を離れて』(1967)、『オリエント急行殺人事件』(1974)など旋律的で美しいものが多い。(もちろん『エクウス』(1977)の様に現代的な作品もある。)
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=Contents=
=R・R・ベネット:歩みと作品=
=R・R・ベネット:名曲案内=
=R・R・ベネット純音楽主要作品リスト=
=R・R・ベネット映画音楽リスト=
リチャード・ロドニー・ベネットは、ジョン・アディスン、ロン・グッドウィン、カール・デイヴィスらと並び、イギリス映画音楽界が誇る俊英の一人です。
ハリウッド楽派がブラス全開の刺激的な音楽を得意とするのに対し、イギリスの映画音楽はしっとりとした美しさを特徴にしていますが、ベネットはその代表的存在です。彼の書く音楽は常にロマンティックでメロディアス。管楽器よりも弦楽器の柔らかい音色を好み、管楽器ならフルートやオーボエといった旋律楽器を愛好して、ハープや弦楽の優しい伴奏を付けるのが常道です。
ベネットの音楽はイギリスの穏やかな文化風土を感じさせます。それ以外の国では、彼の書くような作品は生まれなかったでしょう。実際『遥か群衆を離れて』(1967) では、フォークロアの研究に基づいて、実際に多くのイギリス民謡が用いられています。
英国王立音楽院できちんと音楽の勉強をした彼は、管弦楽の扱いでも見事な腕前を聴かせてくれます。彼のオーケストレーションは常に華麗で色彩的で効果満点です。それは、アタックばかり強くしたハリウッドの音楽とは対称的に、香りと雰囲気に満ちた落ち着きのあるものです。
日頃ハリウッド音楽ばかり聴くことの多い私たちですが、たまには上質のブランデーのようなベネットの音楽で、英国上流階級の雰囲気に浸ってみませんか。
=リチャード・ロドニー・ベネット:歩みと作品=
リチャード・ロドニー・ベネットは、1936年3月29日、イギリス、ケント州のブロードステアズ (Broadstairs) に生まれました。
音楽好きの母 (ホルストの生徒だった!) の影響で5歳からピアノを始め、6〜7歳で作曲も開始。
ロンドンの王立音楽院でレノックス・バークリーに学んだ後、フランス政府の奨学生として1957年から2年間パリに留学し、ピエール・ブーレーズに師事しました。
卒業後の彼は、ジャズ・ピアニストと前衛作曲家という二つの顔を兼ね備えた音楽家としてユニークな活動を繰り広げます。
映画音楽は1956年(19歳)からB級スリラーで書き始め、『狙われた男』(1959) でジャズを効果的に使って名を知られるようになります。
本業のクラシックの分野でも、12音音楽とモダン・ジャズを融合させた急進的な作風で注目を集めますが、1960年代後半から作風が多様化し、委嘱も増えて多忙な作曲生活を送ります。オペラ5作、協奏曲、室内楽、歌曲など多くの作品を残し、レコーディングも多く、LPやCDで聴くことが出来ます。
映画音楽でも1960年代後半からは情感に溢れたシンフォニック・スコアの傑作を多く生み出すようになります。特にジョン・シュレシンジャー監督との出会いは影響が大きく、『Billy Liar』(1963)、『遥か群衆を離れて』(1967)、『ヤンクス』(1979)といったイギリス的な潤いに満ちた上質の音楽を生みます。
(ちゃんとした評伝は後日記載の予定。すんません!)
=リチャード・ロドニー・ベネット:名曲案内=
鑑賞の手引きとして、筆者の主観で★による5段階評価を付けています。
最高は★★★★★、最低は★。
『オリエント急行殺人事件』 (1974)
★★★★1/2
ベネットの華麗でお茶目な作風が効果的に発揮された彼の代表的スコアの一つ。
殺人事件を扱ったミステリーのスコアは、緊迫したサスペンス調の音楽と相場は決まっています。ところがベネットは定石を覆し、オリエント急行の華麗さを表す音楽をテーマ曲に据えることで、鮮烈な印象を与えてくれました。
ピアノと管弦楽によるな古風で大げさな「序曲」からして「おっ!」と耳をそばだてさせます。これは、製作者側が、ストーリーの時代背景を印象付けるために1930年代の流行歌をアレンジして欲しいと伝えた際、ベネットは「自分は編曲者ではなく作曲家だ」と言って、アディンセルのワルソー・コンチェルトとエディ・デューチン (1930年代ニューヨーク社交界の花形ピアニストで伝記映画『愛情物語』のモデル) のスタイルを混ぜたような音楽で時代色を出してみせる、と見得を切った結果なのです。この賭けはベネットの圧倒的な勝利と言っていいでしょう。
そしてさらに意表を突くのが、オリエント急行がイスタンブール駅から発車する場面の音楽「オリエント急行 (The Orient Express) 」です。重厚な汽車が走り出す様子を描写する音楽は、何と華麗なワルツなのです。それも、この上なくリッチな! この音楽はその効果を遺憾なく発揮し、観客に強烈な印象を与えて、「映画の13人目の登場人物だ」と感嘆されました。
「幕間 (Entr'acte) 」では導入部の楽想が想起されます。
ただ、他のアンダースコアに退屈なものが多いので、★は4つ半!
『ヤンクス』 (1979)
★★★★★
J.シュレシンガー監督作品。テーマ曲は実に清楚で、情感あふれる美しい音楽である。
(詳しくは後日記載の予定。すんません!)
=リチャード・ロドニー・ベネット 純音楽主要作品リスト=
□歌劇□
- 歌劇「硫黄の鉱山 (The Mines of Sulphur) 」 (1963) ……3幕
- 歌劇「歌に一文 (A Penny For A Song) 」 (1966/67)
- 子供歌劇「王様の家来全員 (All the King's Men - children's opera) 」(1968)
□バレー音楽□
- 「ジャズ暦 (ごよみ) (Jazz Calendar) 」 (1963/1964) ……完全なジャズのイディオムによる作品。
□ラジオのための音楽□
□映画音楽□
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□交響曲□
□管弦楽曲□
- 管弦楽のためのオーバード (朝の歌) (Aubade for Orchestra) (1964)
- 小管弦楽のための組曲 (1966)
- Spells (1974-75)
- 童謡による変奏曲 (Variations on a Nursery Tune) ……英国BBC放送の委嘱による。初演:1992年
- パルティータ (Partita) ……初演:1995年秋
- 16世紀の節によるリフレクションズ (Reflections on a 16th Century Tune) ……初演:ポーツマスにて、European String Teacher's Association Conferenceによる
□協奏曲□
- ピアノ協奏曲 (1968)
- スタン・ゲッツのための協奏曲 (Concerto for Stan Getz) (1990) ……ジャズのビッグ・バンドの大御所スタン・ゲッツの要望で書かれたサキソフォンと管弦楽の協奏曲。但し1992年の初演は別人によって行われた。
スタン・ゲッツは、ボストン・ポップス管弦楽団とガーシュウィンの歌の編曲を共演するためのリハーサルの最中に、コンサートに付け加えるべきサキソフォン協奏曲がないとは残念だとこぼした。
これを聞いた作曲家ジョン・ウィリアムズ (この時はボストン・ポップス管の指揮者) は「誰かに委嘱すれば?」と言った。
委嘱の打診がベネットに行った時、彼は熱中し、初演や報酬が決まる前から書き始めた。だがスタン・ゲッツは間もなく病死してしまう。こうして委嘱者はいなくなったが、タイトルには彼の名を記念している。
両端楽章のリズム感の強いスピーディーな展開に対し、中間楽章は流麗で、ロマンティックなほどだ。
- ギター協奏曲 ……編成:ギター独奏と室内管弦楽
- パーティー用小品 ……編成:ピアノ独奏と学生オーケストラ
- トランペット協奏曲 (Concerto for Trumpet and Wind Orchestra) (1993) ……1. Declamato - Allegro - Presto、2. マイルス・デイビスへの哀歌 (Elegy for Miles Davis (Lento)) - Vivo 初演:ティモシー・レイニッシュ (Timothy Reynish) 指揮 Royal Northern College of Music Wind Ensemble、マンチェスター、1993/94のシーズンにて
□吹奏楽曲□
- 朝の音楽 (Morning Music) (1986) ……1. 前奏曲 (Prelude)、2. 船 (Ships)、3. 塔 (Towers)、4. ドーム (Domes)、5. 劇場 (Theatres)、6. 寺院 (Temples)、7. 終曲 (Finale)
- 四季 (The Four Seasons for Symphonic Wind Ensemble) (1991) ……1. 春 (Spring)、2. 夏 (Summer)、3. 秋 (Autumn)、4. 冬 (Winter)
□ジャズ・バンドのための曲□
- 声楽と合奏のためのジャズ田園曲 (Jazz Pastoral for voice and ensemble) (1969) ……編成:アルト、テノール、バリトン、サキソフォン、ホルン、トランペット2本、トロンボーン、ピアノ、コントラバス、ドラムス
- 歌手とジャズ・アンサンブルのための独り言 (Soliloquy for singer and jazz ensemble) ……編成:アルトサックス、テナーサックス、トランペット、トロンボーン、ピアノ、打楽器
- 大ジャズ・アンサンブルのためのロンデル (Rondel for Large Jazz Ensemble) ……デューク・エリントンを記念するイベントのために作曲。 初演:2000年5月1日、ロンドン・シンフォニエッタ
□室内楽□
- 2本のオーボエのための「対話」 (Conversations for 2 Oboes)
□合唱曲□
- 説教と献身 (Sermons and Devotions) ……キングズ・シンガーズ結成25周年記念に作曲され、彼らに献呈。 初演:1992年
□歌曲□
- オルフェウスに捧げるソネット (Sonnets to Orpheus) (1979)
=リチャード・ロドニー・ベネット 映画音楽リスト=
凡例: <VD> =劇場未公開/ビデオ・タイトル
<TV> =劇場未公開/テレビ放映時タイトル
<1950年代>
- 『旅券(パスポート)八二四一の女 (International Police)』(1956)
- Pickup Alley (1957)
... 別題 Interpol (1957) [英]
- 『無分別 (Indiscreet)』 (1958) ……クレジットは「Richard Bennett」。監督:スタンリー・ドーネン
- The Safecracker (1958)
- The Man Inside (1958)
- Face in the Night (1958)
... 別題 Menace in the Night (1958) [米]
- The Man Who Could Cheat Death (1959)
- 『悪魔の弟子 (The Devil's Disciple)』 (1959)
- 『怒りの丘 (The Angry Hills)』 (1959) ……クレジットは「Richard Bennett」
- 『狙われた男 (Blind Date)』 (1959) ……ジャズを効果的に使う。 監督:ジョセフ・ロジー
... 別題 Chance Meeting (1959) [米]
<1960年代>
- The Mark (1961)
- Only Two Can Play (1962)
- 『誘惑の夜 (Satan Never Sleeps)』 (1962)
... 別題 The Devil Never Sleeps (1962)
... 別題 Flight from Terror (1962)
- 『新・泥棒株式会社 (The Wrong Arm of the Law)』 (1962)
- Heavens Above! (1963)
- "Doctor Who" (1963) TVシリーズ (1964) ……劇中音楽のみ
... 別題 "Dr. Who" (1963)
- Billy Liar (1963) ……監督:ジョン・シュレシンジャー
- 『不思議な家族・怪奇と幻想の世界 <TV> (One Way Pendulum)』 (1964)
- 『妖婆の家 (The Nanny)』 (1965)
- 『影なき裁き <TV> (The Witches)』 (1966) [英]
... 別題 The Devil's Own (1967) [米]
- 『遥か群衆を離れて (Far from the Madding Crowd)』 (1967) ……☆アカデミー作曲賞ノミネート☆ 監督:ジョン・シュレシンジャー
- 『10億ドルの頭脳 (Billion Dollar Brain)』 (1967)
- 『秘密の儀式 (Secret Ceremony)』 (1968)
<1970年代>
- 『きんぽうげ (The Buttercup Chain)』 (1970)
- Figures in a Landscape (1970)
- 『ニコライとアレクサンドラ (Nicholas and Alexandra)』 (1971) ……☆アカデミー作曲賞ノミネート☆ 監督:フランクリン・シャフナー。シャフナーのパートナー作曲家ゴールドスミスの代役として起用されたが、スコアはシャフナーもゴールドスミスをも満足させた。 サントラ演奏:ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
- 『レディ・カロライン (Lady Caroline Lamb)』 (1972) ……サントラ演奏:マーカス・ドッズ (Marcus Dods) 指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団、独奏ヴィオラ:Peter Mark
... 別題 Peccato d'amore (1972) [伊]
- Voices (1973)
... 別題 Nightmare (1973)
- 『オリエント急行殺人事件 (Murder on the Orient Express)』 (1974) ……☆アカデミー作曲賞ノミネート☆ 監督:シドニー・ルメット サントラ演奏:マーカス・ドッズ (Marcus Dods) 指揮 コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団
- 『殺しの許可証 (Permission to Kill)』 (1975)
- 『ロジャー・ムーア/シャーロック・ホームズ・イン・ニューヨーク <VD> (Sherlock Holmes in New York)』 (1976) (TV)
- 『エクウス (Equus)』 (1977) …… 監督:シドニー・ルメット サントラ指揮:アンジェラ・モーリー (Angela Morley)
- 『ブリンクス (The Brink's Job)』 (1978)
... 別題 Big Stickup at Brink's (1978)
- 『ヤンクス (Yanks)』 (1979) ……監督:ジョン・シュレシンジャー
<1980年代>
- 『戦場の罠 <VD> (The Return of the Soldier)』 (1982)
- The Ebony Tower (1984) (TV)
- "Tender Is the Night" (1985) TVミニ・シリーズ
- 『ミス・マープル/魔術の殺人 <VD>』/『アガサ・クリスティ/魔術の殺人 <TV>』 Agatha Christie's Murder with Mirrors (1985) (TV)
- Strange Interlude (1987) (TV)
- The Attic: The Hiding of Anne Frank (1988) (TV)
<1990年代>
- 『魅せられて四月 (Enchanted April)』 (1992)
- 『フォー・ウェディング (Four Weddings and a Funeral)』 (1994)
- Swann (1996)
- 『スウィーニー・トッド (The Tale of Sweeney Todd)』 (1998) (TV) ……監督:ジョン・シュレシンジャー
<2000年代>
- 『ゴーメンガースト (Gormenghast)』 (2000) (TV-BBC) ……サントラ演奏:ジョン・ハール (John Harle) 指揮 BBCフィルハーモニー管弦楽団。なお合唱曲は神秘主義の現代作曲家ジョン・タヴナーが作曲し、ポール・グッドウィン指揮のエンシェント室内管弦楽団 (The Academy of Ancient Music) と、スティーブン・レイトン指揮のテンプル教会聖歌隊(The Choir of Temple Church)により演奏。

©2001 早崎隆志 All rights reserved.
更新日:2001/02/17; 2003/11/24
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