= 『フィレンツェ年代記』 =
フィレンツェの商人ジョヴァンニ・ヴィラーニ (1275頃〜1348) が残した『年代記 (クロニカ) 』は、その客観的な社会経済分析により、この時代最高の史料と言われる。
そこでは町の概況を示す時も、「神の聖なる祝福により繁栄を与えられ」とか「天まで届く尖塔」「世界の隅々から人々が集まり」などというお定まりの表現は使わなかった。
その代わり、町の人口をパンの消費量から9万人と推定。洗礼堂で毎年受洗する子供は5,800〜60,000人(男が300〜500人多い)、病院のベッド数は1,000以上、毛織物については織元の店2,000、総年産量7〜8万反、価格は12万グルデン、毛織物商工業の従事者3万人・・・このように、飾り文句を連ねず、数字自身に事実を語らせるスタイルを取ったのである。
このような理知的な目は中世人のものではなく、すでに近代的な物の見方が広まりつつあったことを示している。
残念なことにヴィラーニは執筆中の1348年に大流行のペストにかかり、「この疫病は・・・」と書き始めたところで絶筆となった。
|