南インドの東海岸地方を支配した中世インドのタミール系王朝。
隣接するパーンディヤ朝や、デカンを支配するチャールキヤ朝と常に争った。
〔時代〕 3世紀後半〜893
〔地域〕 東南インド海岸地方
〔首都〕 カーンチー(今のコンジーヴァラム=カーンチープラム)
〔特色〕 タミール族の発展;地方行政(村落自治等)整備
〔名君〕 ナラシンハヴァルマン1世(7世紀半ば)
〔経済〕 海上貿易
〔文化〕 ヒンドゥー寺院、タミール文学。東南アジアへの影響。
サータヴァーハナ朝衰退後、その東南部に興る。
王朝の起源に関しては、北インド説、パルティア説などもある。
- 3世紀末〜4世紀初め
- 初期の歴史はよく分からない。
シヴァスカンダヴァルマンなどが王位にあったが、王統関係など不明。
- 4世紀初め
- カーンチーのヴィシュヌゴーパがグプタ朝のチャンドラグプタに捕らえられる (北インドの文献に現れる最も初期の記録)。
- 4世紀半ば
- グプタ朝のサムドラグプタに服従。
- その後の歴史はしばらく不明。
- 5〜6世紀
- 以前にも増して勢いを盛り返す。
- 574〜600 シンハヴィシュヌ
- この王朝を最盛期へ導く。(パッラヴァ朝の歴史はこの王以降はっきりする。)
今日のタミル・ナードゥ州の北アルコット、南アルコット、ティルチラパリ、タンジャーブール (タンジョール)諸県を領域とする。
タミラガムのカラブラ朝を倒し、パーンディヤ朝やスリランカ(セイロン)と争う。
- 7〜8世紀初
- チャールキヤ朝と抗争。
- 600〜630 マーヘンドラヴァルマン1世
- バーダーミのチャールキヤ朝との抗争が始まる。
この時期(7世紀初)、タミル地方で最初の石窟群=マンダガパットゥやマハーバリプラムの一部の石窟が開かれる。柱は太く、浮彫装飾も少なく、簡素で力強い。
- 630〜668 (625〜645頃?) ナラシンハヴァルマン1世(シンハヴィシュヌの孫)
- 王国は繁栄。チャールキヤ朝のプラーケシン2世を破り、スリランカにも遠征。版図はオリッサからペンナール川に至るコロマンデル沿岸部一帯まで広がる。
- 7世紀中頃
- マハーバリプラムを中心に、美術の造形活動が最も活発に。
石窟や巨大な岩壁彫刻の他に、岩塊から寺院全体を刻出する「岩石寺院」が出現。
柱は細くなり、十六角柱や柱基をライオンが支える華麗なものも出現、浮彫装飾も豊富に。その特色は、細くてしなやかな人体をリズミカルに配した群像構成にあるが、他のインド彫刻に比べてあっさりとした印象がある。 → この王朝独自の建築様式が発展。
- その後、勢いを盛り返したチャールキヤ朝のヴィクラマーディティヤ1世 (位654/55〜681) の攻撃にさらされる。
- 680〜720 ナラシンハヴァルマン2世
- 繁栄を取り戻す。
- 7〜9世紀
- 海外交易が盛んで、マハーバリプラム、ナーガパッティナムに造船所を作り、海軍を設立。
東南アジア諸国との貿易を通じ、パッラヴァの建築様式やタミル文字も、チャンパー、シュリーヴィジャヤなどへ広まった。
文化面では北インドの影響が強まり、ヴェーダの祭儀をはじめアーリヤ化が進展した。
その一方でタミル文化の独自性も現れ、碑文はサンスクリット、プラークリット語と並んでタミル語でも記された。
また宗教で、仏教、ジャイナ教に加え、民衆レベルでは、後に「バクティ」とよばれるヒンドゥー教の絶対帰依信仰が広く普及した。 これは、チャールキヤ、パッラヴァ、パーンディヤ3王朝の抗争が一般人民を圧迫する当時の南インドの情勢を背景に起こったヒンドゥー教の宗教改革で、サンバンダル、マーニッカバーサガルなどの聖人が輩出、南インド各地を説法して回った。
- 7世紀末〜8世紀末
- 石窟造営は下火になり、石積寺院が多くなる。柱を支える動物の動きが激しくなり、動物の背に人物が乗ることもある。
代表的遺構は、南型建築の典型とされるカーンチープラムのカイラーサナータ寺、バイクンタ・ペールマール寺、マハーバリプラムの海岸寺院の3つ。
- 8〜9世紀中頃
- ラーシュトラクータ朝、パーンディヤ朝両朝と抗争。
- 8世紀中頃
- パーンディヤ朝のマーラヴァルマン・ラージャシンハ1世に敗れる。
- 9世紀初期
- 美術の造形活動は衰退。彫像はずんぐりとして動きが鈍い。
- 844〜886 ナンディヴァルマン3世
- マイソールのガンガ朝と結び、パーンディヤ朝のシュリマーラ・シュリーヴァツラヴァ(在位815−863)を破る。
- 最後の王アパラージータ
- パーンディヤ朝と激しく攻防し、敵を衰えさせたが……
- 893
- チョーラ朝のアーディティヤ1世に敗れて滅ぶ。
〔美術〕
ヒンドゥー教中心の美術で、戦いを繰り返したチャールキヤ、パーンディヤ両朝の美術と密接な関係のもとに展開し、以後の南インド美術に最大の影響を及ぼした。
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