追加レポート

 「チャイコフスキーは自殺を強要された」とするオルローヴァの研究は大変ショッキングなものなので、これに対する反論もいろいろと行われております。
 その中でも注目すべきなのは、ブリノフとソコロフ (N.O.Blinov and V. S. Sokolov) が共著で出した『チャイコフスキーの最後の病気と死 (Poslednyaa bolezn' i smert' P. I. Chaikovskogo. Moscow: Muzyka, 1994)』という本であります。

 著者たちは、当時の医学の状況を再調査し、チャイコフスキーを診た医師たちのカルテ、関係者の書簡、その他さまざまな一次資料を収集・分析しました。 その結果、チャイコフスキーは、やはりコレラ、あるいはコレラの余病である尿毒症とそれに続く肺気腫による心臓の衰弱の併発で亡くなったのだ、と断定しているのであります。

 彼らによれば、当時のロシアは医学知識の水準が低く、コレラ患者の遺体にキスをしてはいけない、という常識はなかったのだそうであります。
 彼らはまた、オルローヴァ説には事実関係にウソ、ないし誤りがあるとも主張しております。
 ただチャイコフスキーがホモセクシュアルであったことは否定しておりません。

 さて。

 「自殺説」「病死説」どちらが正しいのでありましょうか。
 私のごとき一介の調査員には、何とも申し上げられません。 この決着は地道な研究の進展を待たなければならないでありましょう。
 どちらが正しいにしても、チャイコフスキーが極めて人間くさい人であったことは確かであります。 だからこそ、あのように心に訴える名曲を数知れず残すことができたとも言えるのであります。

  以上、ご報告申し上げます。


※本調査報告書は、宮澤淳一さんのご教示により作成いたしました。

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更新日:1998/05/09

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