同じ音階によりながらも、そこからの音の選び方で異なったタイプの旋律が作られる。この場合、そうした音の選び方を「旋法」と呼ぶ(音階と同義に用いられることもある)。旋法も中心音・副次音を持つ場合がある。
古代ギリシア音楽にはいくつもの旋法があったが、中心音はいずれも「メーセ(中音)」と呼ばれるイ音であり、それぞれの旋法の開始音は副次音に過ぎない。従って調性的な求心力はない。
古代ギリシア音楽にはディアトニック(全音階)、クロマティック(半音階)、エンハルモニック(四分音階)の三つがあったが、最も一般的なディアトニック音階では、次の7旋法が知られる。
(古代ギリシア旋法は高い音から順次下る方向に音を並べた。)
- ミクソリディア旋法……シ・ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ド・シ
- リディア旋法……ド・シ・ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ド (←現在の長音階と同じ)
- フリギア旋法……レ・ド・シ・ラ・ソ・ファ・ミ・レ (←現在の短音階第6音[ファ]が半音上がったのと同じ)
- ドリア旋法……ミ・レ・ド・シ・ラ・ソ・ファ・ミ (←現在の自然短音階第2音[シ]が半音下がったのに等しい)
- ヒポリディア旋法……ファ・ミ・レ・ド・シ・ラ・ソ・ファ (←現在の長音階第4音[ファ]が半音上がったもの)
- ヒポフリギア旋法……ソ・ファ・ミ・レ・ド・シ・ラ・ソ (←現在の長音階第7音[シ]が半音下がった形)
- ヒポドリア旋法……ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ド・シ・ラ (←現在の自然短音階に等しい)
一方、中世ヨーロッパのキリスト教聖歌の旋法は「教会旋法」と呼ばれる。
教会旋法は8種(正格旋法4、変格旋法4)あり、各旋法はそれぞれ、中心音である「終止音(フィナリス)」と、副次的な「属音(支配音、ドミナント)」とを持つ。
正格旋法 (authenticus) は終止音の上へ1オクターヴ広がり、属音は原則として終止音の5度上だが、変格旋法 (plagalis) は終止音の上下(上5度〜下4度)に広がり、属音は原則として終止音の3度上となる。
教会旋法には古代ギリシア旋法名(ドリア、フリジア、リディア、ミクソリディア等)が流用されたが、中身は上記のように全く異なり、終始音へ向かう調性的傾向が強く、ヨーロッパ独自の性格を既に示している。(音の並びも低い方から高い音へ向かう。)
- ドリア旋法 (第I旋法/正格第1旋法) ……レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ 終止音=レ (←現在の短音階第6音[ファ]が半音上がったのと同じ)
- ヒポドリア旋法 (第II旋法/変格第1旋法) ……ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ 終止音=レ (←現在の自然短音階に等しい)
- フリギア旋法 (第III旋法/正格第2旋法) ……ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ・ミ 終止音=ミ (←現在の自然短音階第2音[シ]が半音下がったのに等しい)
- ヒポフリギア旋法 (第IV旋法/変格第2旋法) ……シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ 終止音=ミ
- リディア旋法 (第V旋法/正格第3旋法) ……ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ 終止音=ファ (←現在の長音階第4音[ファ]が半音上がったもの)
- ヒポリディア旋法 (第VI旋法/変格第3旋法) ……ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド 終止音=ファ (←現在の長音階と同じ)
- ミクソリディア旋法 (第VII旋法/正格第4旋法) ……ソ・ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ 終止音=ソ (←現在の長音階第7音[シ]が半音下がった形)
- ヒポミクソリディア旋法 (第VIII旋法/変格第4旋法) ……レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ 終止音=ソ (←ドリア旋法と同じだが終止音と属音が違う)
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